コーシャって?ハラルと違うの?これから知っておきたいコーシャワイン

ワイン記事
ハラル認証が食品業界で注目を集めて、その流れからコーシャにも目が向けられています。実はワインもコーシャワインというものがあり、コーシャ認定を受けているワインが数多くあります。日本では、あまり馴染みがありませんが、外国人の方にワインをサーヴする機会があるプロの方は知っておいた方が良さそうです。

コーシャとハラル

コーシャ(Kosher)とハラル(HALAL)は、混同されがちですが全くの別物です。ハラル食品がイスラムの戒律に従ってつくられた食品なのに対し、コーシャは、ユダヤ教の食べ物に関する定めにそってつくられた食品です。つまり、ハラルはイスラム教徒が食べてよいとされる食べ物で、コーシャはユダヤ教徒が食べてよいとされる食べ物なのです。ユダヤの経典には食べてよい食品、食べてはいけない食品が記されており、敬虔なユダヤ教徒は、3000年も前からずっとその規律を守って生活しています。ハラル認証が食品業界で注目されたのは、全世界にイスラム教徒が15.7億人いると言われており、認証を取る事で、その15.7億人が顧客になる可能性があるからです。それに比べて、ユダヤ教徒は世界に1400万人と言われており、数字の面では見劣りします。ただ、厳密なルールにのっとって加工された食品ということで、「安全」「健康」といったイメージが持たれており、ユダヤ教以外の方にも注目されています。(注:コーシャの「安全、健康」はあくまでもイメージですので、注意が必要です)

コーシャワインとは?

使われる全ての素材、全てのプロセスがコーシャでなければならない

「コーシャ」という言葉は、ヘブライ語の「רכש(カシュルート)」から来ており、これは「適正」を意味します。ワインは宗教行事の様々な場面で使われていることもあり、その清浄さを守るため厳格な規定が適用されています。コーシャの認定を受けるには、まずブドウの破砕から、試飲、瓶詰めに至るまで、全てのプロセスを敬虔なユダヤ人男性のみによって造られなければなりません。また、酵母や清澄剤などワイン造りの過程で使われるものもコーシャでなければなりませんし、貯蔵施設の装置も敬虔なユダヤ人男性のみしか触れることができません。醸造施設は滅菌処理が何度も行われ、使用する樽は新しい樽か、もしくは過去にコーシャワインのみに使われた樽でなければなりません。コーシャの認定を受けたワインは、後ろのラベルで確認することができます。いくつかの認定マークがありますが、最も一般的なのは円にかこまれた「U」のような文字です。これは、正統派ラビ連合によって認証されていることを示しています。その他に、円に「K」、星形に「K」、cRc、ヘブライ語の「רכש」も、ワインがコーシャであることを示しています。また、メビュシャルか、ノン・メビュシャルかも確認できます。

コーシャワインの後ろラベルで認定マークが確認できます。
調理されたワイン?メビュシャルとは。

非常に厳格な規律に従って造られるコーシャワインですが、実はとても曖昧なところもあります。ワイン装置のバルブ一つでも、敬虔なユダヤ人男性以外が触れてしまうと、もうそれはコーシャワインではなくなるのですが、では出荷された後はどうなのでしょう?ユダヤ人ではないソムリエがコーシャワインに触れてサーヴしたらどうなるのでしょう?それはコーシャワインとは呼べないのではないか?と疑問が残ります。結論から言いますとメビュシャルされていれば大丈夫です。メビュシャルとは「調理された」という意味で、ワインの場合、製造の過程で加熱処理をすることです。多くの場合、フレーバーへの影響を最小限に抑えるために、80°Cで低温殺菌され、すぐに16°Cに冷却されす。この加熱処理「メビュシャル」を行ったワインは、その後ユダヤ人以外のスタッフやウェイターが触れてもコーシャワインのままだとされています。なんとも曖昧な感じですね。(極めて厳格で正当なユダヤ教徒の人達は、これを認めていないそうです)。気になる味わいですが、現代のコーシャワインは、それ以外のワインと変わりありません。昔は、メビュシャルで加熱され沸騰して味わいが変わっていましたが、現代の技術では味わいに違いはなくなっています。

コーシャワインの産地は?

コーシャワインが多く造られている国はイスラエルです。イスラエル産のワイン全てがコーシャというわけではありませんが、イスラエルでは、2000年以上前からぶどうが栽培されており、コーシャワインの故郷と言えるでしょう。Yarden、Ytir、Barkan Flam、Domaine du Castel等が有名なイスラエルワインで、世界にコーシャワインを発信し続けています。コーシャワインは現在、ボルドーからカリフォルニアまで、世界中で作られています。有名なボルドーのシャトーでもコーシャワインを造っていますので、次に紹介します。

コーシャワインを造っているボルドーワイン

日本で手に入りやすいコーシャを作っているボルドーワインをまとめました。全てのヴィンテージがコーシャでなかったり、一部のワインだけコーシャを取り入れていたり、対応はシャトーによって様々です。

Ch.Giscours

シャトー・ジスクール (Ch.Giscours)

メドック格付け第3級のワインで、マルゴー村で造られています。コストパフォーマンスが高く、安定した品質を誇ります。力強い凝縮感があり、リッチなワインです。

Ch.Grand-Puy Ducasse

シャトー・グラン・ピュイ・デュカス (Ch.Grand Puy Ducasse)

メドック格付け第5級のワインで、ポイヤック村で造られています。格付けワインの中では、やや目立たないワインですが、実力は確かで高品質です。長期熟成させずに比較的早くから飲めるとされており、飲み頃を気にせず楽しめます。

Ch.Gruaud Larosesya

シャトー・グリュオ・ラローズ (Ch.Gruaud Larose)

メドック格付け第2級のワインで、サン・ジュリアン村で造られています。ラベルには、”LE VIN DES ROIS, LE ROI DES VINS”(王のワイン、ワインの王)を記されており、品格のあるワインです。

Ch.Leoville Poyferre

シャトー・レオヴィル・ポワフェレ (Ch.Leoville Poyferre)

メドック格付け第2級のワインで、サン・ジュリアン村で造られております。サン・ジュリアン村にある「レオヴィル3兄弟」の一つです。気品と力強さを兼ね備え、長熟に耐えるワインです。

Ch.Rauzan Gassies

シャトー・ローザン・ガシー (Ch.Rauzan Gassies)

メドック格付け第2級のワインで、マルゴー村で造られています。シャトー・マルゴーやシャトー・パルメと隣接した好立地です。骨格がしっかりした、リッチで凝縮感のある味わいです。

Ch.Lafon Rochet

シャトー・ラフォン・ロシェ (Ch.Lafon Rochet)

メドック格付け第4級のワインで、サン・テステフ村で造られています。5大シャトーに隣接しており、恵まれた好立地の畑で、有機栽培、ビオディナミ農法を実践しています。

Ch.Lascombes

シャトー・ラスコンブ (Ch.Lascombes)

メドック格付け第2級のワインで、マルゴー村で造られています。他の格付け2級ワインに比べて、少し地味なシャトーと言われていますが、実力のあるシャトーです。モダンで洗練されたワインです。

Ch.Pontet Canet

シャトー・ポンテ・カネ (Ch.Pontet Canet)

メドック格付け第5級のワインで、ポイヤック村で造られています。最先端の製法を積極的に取り入れる革新的なシャトーです。5大シャトーに迫るほどの品質と人気のあるワインです。

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