コラヴァンを使ってワインを評価したなら、「コラヴァン使ってるよ」と言いましょうという話

ワイン記事
長くワイン業界に携わっていますが、コラヴァンほど衝撃を受けたワインアイテムはありません。コルクに針を通して、そこからワインを抽出しつつ、アルゴンガスを注入し酸化を防ぐアイテムなのですが、抜栓するよりずっとワインを長持ちさせてくれます。おかげでレストランやワインバーでは、高価なワインをグラスで提供しやすくなりました。しかしコラヴァンも完璧ではありません。私も愛用していますが、コルクに針を刺したワインはゆっくりでも確実に変化しています。マスターオブワインのジェイミーグッドさんは、コラヴァンを使ったワインを批評するなら、「コラヴァンを使っている」と伝えるべきでは?と考えているようです。

(以下、wineanorakの記事を抜粋、翻訳しました)

ワイン評論家は、味わったサンプルがいつコラヴァンを使用したか記すべきだと思います。 もし私がワインの作り手で、試飲用のサンプルボトルを送ったのなら、ワインは抜栓して注がれて評価されると思っているはずです。

仕事中の自分の写真をソーシャルメディアに投稿しているワイン評論家を見かける事があります。 ボトルのラインナップの前で試飲しているワイン評論家の姿というのは、珍しいものではありません。 しかし、私を驚かせるのは、彼らがコラヴァンを使ったワインから試飲していることです。

ボトルを抜栓せず、医療用の針からワインを抽出すると同時にアルゴンガスを注入するワイン保存システムのコラヴァン(Coravin)は、ワイン界で最も革新的な製品の1つです。 私は多くのコラヴァンを利用したワインを味わい、良い経験も悪い経験もしました。 良い場合の方が多いですけど。

コラヴァンは、レストランで高価なワインをグラスで売ることを可能にしてくれます。 これにより、ワイン担当者は、他の売り方では法外な値段になるようなワインを、同じ味で、多くの顧客に提供することができます。

しかし、コラヴァンが必要でないシーンでは、使用を避けた方が良いでしょう。 細い針を通して噴出された泡立つワインが、抜栓してボトルから注がれたワインと、まったく同じになるでしょうか? どんな時でも?確かに、コラヴァンはワインにおいて良い発想を与えてくれると思います。しかしワインの正しい評価方法においては、潜在的な障害にもなりえます。

また、スクリューキャップワインの場合、コラヴァンを使用するには、ワインを開けて、新しいコラヴァン専用キャップに付け替える必要があります。これは、空気が入ってしまうプロセスです。 ワインをすぐに評価する場合はそれほど問題にはなりませんが、時間が経ってからの場合は問題になる可能性があります。

なぜ評論家がコラヴァンを利用する必要があるのでしょうか?彼らのテイスティングの目的は、可能な限りワインの真相に近づくことのはずです。ワイナリーは味わってもらうためにサンプルワインを送っているのです。 さらに覆い隠さなくても、オフィスという環境での大規模なワイン試飲は、すでに充分問題である側面を持っているのです。 もし私がワインを提出したワイナリーで、評論家がそれをコラヴァンしていると知ったとしたら、私は不満に思うでしょう。

私は、コラヴァンを利用したサンプルからワインの評価が行われる場合、何らかの方法で公表されるべきだと思います。それが悪い評価法だという意味ではありません。ただ、そうであるということを記すだけです。

次に、サンプルワインがデキャンタされた小さなボトル(またはパウチやチューブなどの他の容器)という現象が起こっています。コロナ下での渡航制限のため、私はこのような小さなサンプルで多くの試飲をしてきましたし、それは素晴らしいアイデアだと思います。 しかし、それらのワインが「本来の味」を表しているか、どうやって知ることができるでしょう? 充填プロセス中に酸素に触れると、ワインは変化します。一部のワインはこのような影響を受けやすくなっています。

ワインの質を損なうことなく、フルボトルから小さなボトルにワインをデキャンタすることは非常に困難です。 不活性ガスであるアルゴンは、酸化を防ぐために一般的に使用されます。 しかし、多くの人は、アルゴンが「一面を覆うもの」としては、機能しないという事に気づいていません。確かにアルゴンは空気より重いですが、空気中のガス(主に窒素と酸素)は濃度勾配によってアルゴンの層に拡散します。そしてやがてアルゴン、窒素、酸素の混合物になってしまうのです。

小さなサンプルボトルからテイスティングノートが取られている事を読み手に示す事は公正な事だと思います。これからは、私も実践しようと思います。

コラヴァンを利用したサンプルや小瓶のサンプルが、評論家にできる最善の方法である場合もあります。しかしながら、残りのワインを後に保存するために、評論家が積極的にコラヴァンを利用しようとする選択には、実際とても驚いています。評論家はワイン評価を売り物としています。なので評論家達は、できる限り正しく正確であるために、あらゆる努力をするべきだと思うのです。

(以上、wineanorakの記事を抜粋、翻訳、編集しました)

様々な意見があると思いますが、試飲したワインの状況は、大切な情報だと思います。試飲した日付が記されるように、ボトルの状態も、小さなサンプルボトルからの試飲なのか、コラヴァンを利用しているのか、そんな表記を添える事が一般的なワインテイスティングのスタイルとして定着していくかもしれません。ただ、コラヴァンは、本当に優れたワインアイテムなので、ますます一般的に定着すると思っています。

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